雨の日の少年

水に潜ったり、雨に濡れたりするのが好きな少年がいました。

小学校月曜日の朝の全校集会。校長先生の長い話を聞きながら、こんな空想をします。

この広い講堂がぜんぶ水の中にあって、ぼくはみんなの頭の上を泳いでいます。

閉まっていない窓がひとつあって、そこから青空の見える街並みに飛び出ていきます。

屋根の上でひと休みをして、校長先生の話が終わると瞬間移動して、列の中の自分に戻ります。

別の日には、雨が降る中をずぶ濡れで歩いたりします。

髪の毛がぴったり張り付いて、パンツまでぐしょぐしょです。

鼻水は出っぱなしだけど、誰も気が付きません。

人気のない軒下でじっとしていると、震えるので、また歩き出します。

もうすっかり水とひとつになってしまうと、どうってことはありません。

狭い路地に入り込んで、ずぶ濡れ猫と挨拶をします。

大きな木の大きな葉っぱの裏側にいた虫たちと一緒に空を見上げます。

はぁはぁと笑うと、口の中に雨のつぶつぶが飛び込んできて、また笑います。

ハッとする。

みんな一緒に水の中にいた。

そんな記憶がばあっと浮かんで一瞬で大きくなって、消えた。

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