楽譜なんかいらない

ぼくは、おもに大人になってから音楽を始めるようになった方々への音楽レッスンやグループ指導をするようになって20数年になります。その時にいつも感じていることがあります。それは、楽譜があるせいで苦労している方がたいへん多い、ということです。こういった場合、本当に楽譜って必要なんでしょうか。

もちろん、みんながそれぞれの楽譜を見ることで、合わせて曲を演奏することができます。千年以上前の時代がそうだったように、楽譜がなく、口真似だけで音楽を伝えるのはとても難しいことです。それは現代の音楽そのものが、とても細やかで複雑なものになっているからです。

音楽は本来、感覚で受け取り、感覚で表現されるものです。一番大切な「感覚」が主であってほしいのですが、楽譜を眼の前にすると、誰もが楽譜というパズルの解読者として頭をひねりながら音を出しているのです。これではほとんどの人にとって、音を出すことがたいへんな苦労の連続です。

歌ってほしい

ぼくとしては、実際に演奏するときに、楽譜というパズルは「だいたい解けている」状態になっていてほしいのです。ですから常々レッスンでは、楽器を持たないで楽譜を追いかけながら口ずさむ、という練習をしてほしいと願って、そう伝えています。

たとえば、今日「グリーンスリーブス」という曲を、あるグループで練習しました。小山京子さんという方が編曲したオカリナ三重奏です。曲を聞くと、すごくやさしい曲なんですが、3つのパートに別々の役割があって、合わせたときに、自分の位置がどこにあるのかが楽譜の上からは見えてこないようです。そのため、休符を目にするたびに、頭の中で数を数えるということになり、休符のあとで出てくる音のタイミングが合いません。

たぶん、ぼくが言っていることの意味はわかってもらえているのですが、頭で数を数えた途端に、タイミングがわからなくなるのだと思います。「頭で考えず、体で感じて。」ぼくは、そう必死で伝えていました。

楽譜は地図

楽譜はとても細かく詳しく書かれていて、まるで音楽の設計図のようです。これは、地図のように見えます。実際、地図やナビを見るときのように、細かく見るのではなく、時々行先に注意しながら、大雑把に見たほうが理解しやすいでしょう。

また、同じような意味で料理のレシピにも例えられます。レシピ通りに作ろうとすると、むしろ塩梅(あんばい)がわかりません。ここでもやはり感覚が一番大切です。

楽譜は、あくまで伝達手段として書かれたものであって、音楽そのものではありません。楽譜に手こずっている方ほど、楽譜から少し離れてみてはいかがでしょうか。


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