息を止めて集中する?集中できる?
ある日の音楽のレッスンで、こんな相談を受けました。
「娘が吹奏楽部で打楽器をやっているんだけど、何度練習してもできないところがあって、ソロの演奏だし、コンクールも近くて焦ってるんです。」
「ああじゃあ、一度レッスンしましょうか。」
後日、娘さんのレッスンをしました。お母さんも一緒です。
ひと通り、演奏を聞いたんだけど、そんなに難しいリズムでもなさそうです。ただ、どうしてもタイミングが合わない箇所がいくつかあって、そこがズレてしまいます。
「まず、ゆっくり深呼吸してください。」
「そして、少しずつ息を吐きながら、腰を中心にゆらゆら体を動かしましょう。」
「いいよ。そのままもう一回やってみて。」
一発でできました。娘さんも、お母さんもあっけにとられています。
「どうして、今までできなかったことが、今できたんだろう。」
頭の中で疑問符がぐるぐる回っている様子です。
「息を止めていたからですよ。」
そうなんです。集中するあまり、息ができていなかった。止めていたから、ということでした。
「息を止めるというのは、時間を止めることなんですよ。リズムがそこで止まってしまいます。」
息を止めて集中してしまうというのは、イメージではわかるんですが、タイミングが重要になってくる場面では逆効果です。たとえば、アマチュアのピアノの発表会とか、歌の伴奏のピアノ演奏とか、ああ息を止めているなという演奏を聞くことがあります。息を止めて弾いているピアノは、呼吸がありませんから、聞いている方も緊張することがあります。伴奏が歌と合わなかったりします。
今回の娘さんも、吹奏楽の先生や先輩に何度も合わないことを指摘されて、何度も練習を積み重ねてきたことでしょう。呼吸をすることで再び時間が進み始めます。
「ああ。もう大丈夫。」
娘さんは、それから何度でも間違えずに演奏できるようになっていました。そして、笑顔です。
「その笑顔がいいね。」
「はい。」
後日、本番のステージでもうまく演奏できましたとお母さんから笑顔の報告を受けました。
足でリズムをとる
さて、時々気になるのは、足でリズムをとる方が多いということです。ソロの演奏ではたまに足でリズムをとることがあります。それは悪くはないと思います。しかし、アンサンブルではかえってリズムが合わない原因になります。特に「うんうん」と首を縦に振ってリズムをとって、足でもリズムをとって、となると、タイミングは確実に遅れます。腰を中心に、呼吸しながらゆらゆらと体を動かすと、リズムは体の中で自然に動いてくれます。リズムに関する詳しいことはまた後日書きます。
脳には時間がない
逆に頭の中だけでカウントをとろうとすると、脳には時間という概念はありませんから、その時の気分で早くカウントしてしまいます。リズムを合わせる脳のメカニズムという意味で、ヒントになることがあるので、また後日書いておこうと思います。
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