絶対音感と相対音感

「絶対音感」っていうと、なんとなく特別な超人的な能力のように思われています。本当にそうでしょうか。

例えば、ピアノの真ん中あたりの音を「中間の音」、右端に近い音を「高い音」、左端に近い音を「低い音」と呼ぶことにします。この3つのグループを聞き分けられない人はいないでしょう。これも絶対音感なんだよって言うと、「音の名前が当てられる人」じゃなきゃだめでしょうという人が必ず出てきます。

コーヒーカップにスプーンが当たったときに、チンと鳴って、「ファ♯」、踏切がカンカンなる音が「ソレソレ」だって言う人がいます。そういうのが一般的には絶対音感だと言われています。ただしこれは、感覚を記憶して知識に置き換えているだけです。

スプーンのチンを聞いて真似できる人はいます。踏切のカンカンを同じように真似できる人もいるでしょう。これは基準になる音(元の音)があって、比べたときに音の高さがわかるという意味で相対音感と言います。

人が歌を歌ったり、演奏したりするときにはこの相対音感が使われています。

最初に挙げたピアノの音のグループをもっと細分化して、当てられるようになれば、最終的には音の名前が当てられるようになります。もっとわかるようになると、A=440Hzより低いか高いかがわかるようになります。これは感覚の記憶であり、それを音の名前を言い当てられるのは知識が結びついているからです。

何が言いたいかというと、音の名前が当てられるということにはあまり意味はないようにぼくは思います。というか、そういう絶対音感を身に付けてしまうと、わずらわしいし、むしろ邪魔になります。特に楽譜の音と実際に出ている音が違う楽器を演奏するときは、頭が混乱してしまいます。それはどうしても知識、思考の方に意識が向いてしまうからです。

音の名前を言えるという意味での絶対音感は、身に付けなくていいし、そのことで引け目を感じている人がいるとしたら、安心してほしい。

絶対音感があるために苦労している方は、もっと感覚の方に意識を向けるといいでしょう。

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